軟膜下皮質多切術(MST)

言語、運動、視覚などを直接つかさどる脳の領域にてんかん原性領域が存在する場合、てんかん焦点の切除によりそれらの脳機能が失われる可能性が高くなります。そのような場合に脳機能を保ちながらてんかん波を遮断する事を目的に行われる手術が、軟膜下皮質多切術(multiple subpial transection: MST)です。MSTの手法は大脳皮質に5mm間隔で切開線を加えることです。これによりてんかん波の水平方向への伝播は妨げられ、てんかん波の同期が抑えられることにより発作が抑制されます。

なお脳機能にとっては大脳皮質からの垂直方向の繊維が重要で、5mm間隔の切開では神経脱落症状の出現は見られないとされています。発作抑制効果は焦点切除術には劣るものの、MSTは単独あるいは焦点切除術との併用で応用が利く手術法です。