(1) 大脳半球離断術
一側大脳半球に広範囲のてんかん原性域を持つ患者様に対しては大脳半球離断術が適応となります。適応となる疾患としては、片側巨脳症やスタージ・ウエーバー症候群、ラスムッセン脳炎、虚血性脳血管障害後、外傷後などがあります。この手術法は、病側の脳を健常脳から切り離す(取り除くのではなく繊維連絡を切ります。)ことによって、病側脳からのてんかん波の伝播を防ぐ手術法です。てんかん原性域が片側の大脳半球に存在する場合には良好な発作予後が見込めます。ただし、患側半球に運動機能、言語機能、視機能などが残存している場合には、手術によって、残存機能が犠牲になるため、適応判断には慎重な検討を要します。
手術方法としては、水平法、垂直法と大きく分けて2種類の手術法があります。我々はどちらでも可能な場合には垂直法を行っています。
(2) 側頭頭頂後頭葉離断術
片側の側頭葉、後頭葉、頭頂葉にてんかんの原因があり、前頭葉にはてんかんの原因はなさそうである場合、側頭頭頂後頭葉離断術の適応となります。てんかん原性領域が手術範囲内におさまっている場合には良好な発作予後が見込めます。ただし、手術範囲に存在する機能は犠牲になるため、適応判断には慎重な検討を要します。
(3) 中心部温存大脳半球離断術
片側の前頭葉、側頭葉、後頭葉、頭頂葉にてんかんの原因があるものの、運動野にはてんかんの原因がなさそうである場合、中心部温存大脳半球離断術の適応となります。てんかん原性領域が手術範囲内におさまっている場合には良好な発作予後が見込めます。ただし、手術範囲に存在する機能は犠牲になるため、適応判断には慎重な検討を要します。
※離断術と切除術の違いについて。
離断術というのは、脳そのものは取り除いてしまわず、頭の中に残しておきます。切除術というのは、脳そのものを取り除きます。どちらの手術でも、その部分から、てんかんが起こらないようにするという意味で同じ効果をもちます。また、どちらの手術でも、その部分に存在していた脳機能は失われます。(離断や切除される脳以外の脳が機能を代償してくれたり、離断や切除される脳にそもそも目立った機能が存在しない場合には、脳機能の低下は目立たない場合もよくあります。) 現在のところ、我々はどちらでも可能な場合には、離断術を選択しています。