Wada test (ワダテスト)

目的
一般的に言語の機能(話す、理解する、読む、書く、等)は左大脳半球で行われいます。(右利き方の95%以上、左利きの方の70%以上)。ただし、てんかん患者さまは、長期にわたるてんかんの影響や過去の脳損傷などで、この割合が異なっていると報告されています。例えば、左大脳半球の脳腫瘍や皮質形成異常、幼少時の左半球の損傷などで、言語機能が右側大脳半球に移動することもしばしばみられます。言語優位半球のてんかんでは、手術治療において切除可能な場所が限られる為、てんかんの手術戦略を立てる上で、言語優位半球が左右どちらかを判定しておくことが重要です。ワダテストは、脳血管撮影を兼ねて行うため、脳内の血管の形態や血行動態も調べることができます。これらのことにより、より安全で確実な手術方法の検討を行うことができます。

方法
局所麻酔を使用し、右鼡径部から大腿動脈を穿刺します。カテーテルという細い管を大腿動脈から大動脈弓まで誘導します。さらに、一方の内頸動脈までカテーテルを誘導し、造影剤を注入しながらレントゲン撮影を行います。必要な場合にはさらに末梢までカテーテルを誘導する場合があります。次に、プロポフォールという麻酔薬を内頸動脈に注入します。この薬剤により、一方の大脳半球は数分間、一次的に機能を停止します。機能が停止すると、片一方の手足に力が入らなくなり、言語優位半球の場合には、言葉が出なくなります。この数分間の間に、復唱、音読、物品呼称、記憶などの課題をおこないます。麻酔薬の効果が切れると、また元通りになります。ついで、反対側の内頸動脈でも同様の検査を行います。検査は1時間程度で終わります。検査の後、カテーテルを抜去し、数時間の安静期間が必要です。

★現在のところ、プロポフォールは静脈内に投与することを想定した薬剤であり、動脈内投与については保険適応はありません。我々は、プロポフォールの動脈内投与について、倫理委員会に申請し承認を得たのち、適応を厳格に判断したうえで本検査を行っています。