前頭葉てんかんに対する焦点切除術、前頭葉離断術

側頭葉てんかんについで手術適応となることが多いのが、前頭葉てんかんです。発作症状は側頭葉てんかんと異なり、明らかな前兆なく発作が始まることが多いとされています。頭頚部を回旋し、両上肢を強直させる発作や両下肢をバタバタさせるなど、大きな運動性要素が多く見られるのが特徴です。また、全身けいれんに移行しない場合は発作内容を覚えていることもあります。正確な焦点診断ができれば、その焦点のみを切除する焦点切除術を行いますが、前頭葉に広範囲に焦点が存在する例も実際には多く、この場合は運動野を温存して、前頭葉前半部を離断する手術を行うこともあります。

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前頭葉てんかんの場合は側頭葉てんかんに比して一般的に発作消失率が劣り、50-70%程度の発作消失率とされています。これは側頭葉てんかんの場合の海馬というような明確な焦点構造物が存在しないことが原因です。

※離断術と切除術の違いについて。
離断術というのは、脳そのものは取り除いてしまわず、頭の中に残しておきます。切除術というのは、脳そのものを取り除きます。どちらの手術でも、その部分から、てんかんが起こらないようにするという意味で同じ効果をもちます。また、どちらの手術でも、その部分に存在していた脳機能は失われます。(離断や切除される脳以外の脳が機能を代償してくれたり、離断や切除される脳にそもそも目立った機能が存在しない場合には、脳機能の低下は目立たない場合もよくあります。)  離断術の方が、手術後の合併症が少ないと考えているため、現在のところ、我々はどちらでも可能な場合には、離断術を選択しています。