てんかんの外科手術 (術式の説明)

てんかんの外科手術は以下の3種類に大別されます。(てんかんの焦点を正確に同定するため、診断的手術「頭蓋内電極留置術」を行ってから治療的手術を行う事もあります。)各手術についての説明を加えます。

てんかん手術シェーマ

① てんかん原性領域を切除する焦点切除術

各種検査によって、てんかんの焦点が同定でき、その部位が切除可能である場合、焦点切除術を行います。完全に切除できた場合、てんかんの根治が望める手術である為、可能な限り焦点切除術を行うべく各種検査をすすめます。以下の様な手術術式があります。

② てんかん波の伝播を抑制する遮断手術

何らかの理由で上述の焦点切除術が不可能である場合、てんかん波の広がりを抑える遮断手術が適応となる場合があります。焦点切除術に比べ根治性は低い手術となりますが、特定の病態には非常に有効であり、また焦点切除術で問題となる麻痺や言語障害の出現に対するひとつの解決策でもあります。

焦点が多焦点あるいは左右大脳半球の広い範囲にわたっており、転倒発作を中心とする発作が難治に経過する場合、脳梁離断術の適応となります。てんかんの焦点が同定できたものの、この部位の切除によって麻痺や言語障害が出現することが予想される場合、軟膜下皮質多切術が適応となります。海馬が焦点と同定できたものの、海馬切除によって記憶力の障害が大きいと考えられる場合、海馬多切術の適応となります。

③ てんかん発作の頻度、程度を減らす緩和手術

何らかの理由で上述の焦点切除術が不可能である場合に、てんかん発生の閾値を上昇させ、てんかんが起こりにくくする手術が、迷走神経刺激療法です。開頭を要しないため、体への負担が非常に軽いことも本手術の特徴です。海外では、脳深部刺激療法(DBS)や、埋め込み型脳局所刺激(RNS)なども行われていますが、現在のところ日本では保険適応がなく、ほとんど施行されていません。

単回の手術で発作をコントロールする事が理想ですが、実際には複数回の切除手術を行う場合や、発作の緩和の為に①②③の手術をそれぞれ組み合わせて行う場合もあります。この場合、手術の順序やタイミングは定まっていないため、患者様毎に詳細な検討を加える必要があります。