側頭葉てんかんに対する海馬扁桃体摘出術

成人のてんかんで最もよい手術適応となるのが側頭葉てんかん、特に内側側頭葉てんかんです。内側側頭葉てんかんの病歴として多いのが、仮死状態で出生あるいは幼少時の熱性けいれんや脳炎などの既往です。発作は10歳頃より前兆として上腹部の不快感を伴い、意識をぼんやりさせる複雑部分発作で時に全身けいれんに移行するといった特徴があります。頭部MRIでは側頭葉内側部に位置する海馬が白くなったり、萎縮がみられたりします。下図のMRIでは、黄色で囲まれた部分が反対側に比べて白くなり縮んでいるのがわかります。海馬硬化症が疑われるMRI画像です。

Hippocampal sclerosis2

正常の海馬は短期記憶の中枢でありますが、海馬硬化を来たした海馬は記憶の中枢としての働きは低下し、てんかんの原性領域となっています。典型的には発作間欠期脳波において前側頭部に異常波(棘徐波など)がみられ、SPECTやFDG-PETにおいては側頭葉内側の血流低下、糖代謝低下がみられることがあります。このような内側側頭葉てんかんに対する外科的治療として行われるのが海馬扁桃体摘出術です。その手術方法については施設によって様々ですが、80%を超える良好な発作消失率が期待できます。

TSA

海馬扁桃体摘出前後のMRI画像を示します。黄色の点線で示した部位が海馬、海馬傍回、扁桃体にあたります。本例のように側頭葉の内側部分のみを摘出する、選択的海馬扁桃体摘出も行っています。