迷走神経刺激療法(Vagus nerve stimulation:VNS)

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 迷走神経刺激術は頸部に刺激電極、前胸部にジェネレーターを埋め込み、間歇的に頸部の迷走神経を刺激することにより、大脳皮質の抑制機能を高め、てんかん発作の程度、頻度の抑制を図る緩和的外科治療法です。欧米では1990年代より、本邦では2010年7月に保険適用となりました。効果としては、おおよそ50%の患者様に対して50%以上の発作抑制効果が見込めるという報告がなされています。緩和療法ではありますが、年齢や発作型への適応制限はなく、従来の内科的、外科的治療の効果への上乗せ効果が期待できます。またうつ症状の改善や意欲の上昇といった精神面での安定効果も報告されています。

VNSの導入は外科的治療が困難であった薬剤抵抗性のてんかん患者さまに対して抗痙攣剤に付加的な効果をもたらす治療法として大きなインパクトを与えました。また、従来より外科的治療の適応とされてきた部分てんかん(局在関連てんかん)に対してもその治療戦略に大きな変化をもたらしています。例えば両側側頭葉てんかんに対して片側の焦点切除術にVNSを追加したり、転倒発作を主訴とする全般てんかんに対して、まず脳梁離断術を行って遺残発作にVNSを行ったりといった新しい治療戦略です。この様にVNSは他の外科的治療に追加あるいは併用として行う場合が多いですが、単独で用いることもあります。難治性の特発性全般てんかんや脳炎後てんかんなどが良い適応です。欧米での動向を鑑みても、今後も本手術が適応となる方は増加すると考えられます。