てんかんの内科的治療

内科的治療で、十分な発作抑制が得られていない場合、外科治療の可能性があります。ここでは、内科的治療(薬剤治療)について簡単に説明します。

長らく本邦には新しい抗発作薬(抗てんかん薬)が導入されてきませんでしたが、2006年以降、数種類の新規抗てんかん薬(ガバペンチン、トピラマート、ラモトリギン、レベチラセタム)が相次いで市販され、使用可能な薬剤としての諸外国との格差は大幅に縮小しました。これらの新規抗発作薬の特徴は発作抑制効果にすぐれる薬剤が多いことに加え、副作用が少ないことが挙げられます。新規抗発作薬の導入により、薬物療法の選択枝は大きく広がったと考えられます。さらに、2016年には、ペランパネル、ラコサミドが発売されました。

・基本的な抗発作薬の使い方
現在でも一般的に用いられているてんかん症候群の分類は国際抗てんかん連盟が1989年に提唱した分類です。本文類はてんかん症候群を、[1]病因が特発性(器質的病変を持たない)か症候性(器質的病変を持つ)か、[2]発作型が部分発作(脳の一部分からはじまる)か全般発作(発作が左右の大脳半球から同時にはじまる)かで、合計4通りに分類する方法です。この方法での分類別に薬剤が選択され、全般てんかんに対してバルプロ酸、部分てんかんに対してカルバマゼピンが第一選択薬として用いられてきました。

次に第一選択薬を十分に増量しても、発作抑制が得られない場合の薬剤選択を示します。

新規抗発作薬の出現前に比べ、大きく選択枝が増えたことがわかります。とりわけ副作用が少なく、発作抑制効果が強いとされている新規抗発作薬はこの段階で広く用いられています。なお新規抗発作薬の中で全般発作への保険適応は現在の所、ラモトリギンのみとなっています。(近年、新規抗発作薬の単剤療法が保険適応となった為、第一選択薬に代わって新規抗てんかん薬が使われる傾向にあります。)

併用薬の選択に際してはまず作用機序が異なり、薬物相互作用の少ない抗痙攣剤を併用する事が重要です。薬物作用機序は大別するとナトリウムチャネル阻害、カルシウムチャネル阻害、gamma-aminobutyric acid (GABA)増強、グルタミン酸拮抗、モノアミン遊離増加、Synaptic Vesicle Protein 2A(SV2A)結合といったものがあり、各薬剤の作用点を勘案しながら併用薬を選択する必要があります。また薬物の排泄経路、代謝酵素、薬剤排出トランスポーター等の兼ね合いから、抗発作薬、あるいは他の内服薬との間に薬物相互作用を有するものが多く、このことも併用薬選択に際する勘案事項となります。次に発作抑制以外の陽性効果を利用し、患者さまのQOLを上げる事を計画することも重要です。例えば、ラモトリギンの抗鬱作用、神経因性疼痛への効果、トピラマートの抗肥満作用、偏頭痛、振戦への効果、ガバペンチンの神経因性疼痛および偏頭痛への効果などが挙げられます。さらに使用後の副作用発現に早期に対応する為に特徴的な副作用を知っておく必要があります。新規抗発作薬の中では特にラモトリギンの発疹、トピラマートの抑うつ、精神錯乱、傾眠、認知機能障害、ガバペンチンの眠気、幻暈、レベチラセタムの易刺激性などが知られています。

★本ページで掲載した薬剤名は「一般名」といい、患者さまが病院でもらう薬の「商品名」とは名前が違います。少しわかりにくくなってしまっていますが、特定の会社の薬剤名のみを掲載することによって、特定の会社の宣伝につながる可能性を危惧した為です。なお、「一般名から商品名の検索」や「商品名から一般名の検索」は、下記のサイトから簡単に行えます。

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